板倉の家とは、戦後大量に植林され伐期を迎えた杉を有効活用し、丈夫で長持ちする、温湿度の安定したすまいとして、民家の再生を提唱する筑波大学・安藤邦廣教授らの長年の研究によって開発された「板倉構法」の家です。正倉院や伊勢神宮にみられる『校倉づくり』をルーツとし、高温多湿な日本の風土において、穀物を一定の温湿度で保存する為の倉づくりにも用いられていました。
「板倉構法」の特徴である壁は4寸角(12cm角)の柱と柱の間に厚さ30mmの杉板を落し込んでつくり、堅牢な構造を生み出します。ビニールクロスやベニヤを貼らず、床・屋根も杉材をそのまま化粧材として仕上げるので、家を丸ごとすっぽり杉で覆ったようなさわやかな空間となります。


「壁倍率」基準値の2.2倍-耐震性
▶平成17年9月 「壁倍率」で国土交通省認定
板倉構法の外壁は30mm厚の杉板の片面に24mm厚の木摺りを直交に張り合わせます。このことで剛性が高まり、平成17年9月、地震の揺れに対する壁の強度を表す「壁倍率」が基準値の2.2倍という木造住宅では高い評価の性能認定を国土交通大臣から取得しました。
耐震性が高く、粘り強く復元性があり、崩壊を生じさせない安全・安心な構造であることが実証されました。


都市部でも建てられる木造住宅-防火性
▶平成19年4月 「防火構造」で国土交通省認定
30mm厚の杉板の片面に24mm厚の木摺りを直交に張る板倉構法の外壁は、総厚54mm以上の「燃えしろ」となり平成19年5月「防火構造」の国土交通大臣認定を取得しました。
これにより法22条区域の3階建以下や準防火地域内の2階建以下の住宅でも板倉構法で設計・施工する事が可能になりました。

◆防火構造とは・・・
建築基準法によると法22条区域や準防火地域では、建物の外壁や屋根の軒裏の仕上げは一定の防火性能ををもつ構造である事が定められています。一定の防火性能というのは、近隣で火事が起きたときに①壁が容易に崩壊、亀裂を起こさないこと(非損傷性)、②壁の裏面(屋内面)の温度が容易に上昇し内部に延焼しないこと(遮熱性)をいいます。この両性能を20分間もつものを「準防火性能」、30分間もつものを「防火構造」と呼びます。


びわこ板倉の家の特徴
板倉の家は全国各地で建てられており、構法のルールに従いながらも設計者や職人たちの独自の工夫によって仕上がりは様々です。「びわこ板倉の家」では板倉構法を基本に森林との共生を考えて農林漁業が自然循環することができる材料にこだわっています。


▶断熱材は使用しない
板倉の壁は、30mm厚の杉板のの外側に24mm厚の木摺りを直交に張る、合わせて54mm厚の杉板で構成されています。さらにその外側に10mm厚の杉板を張ることにより外壁との間に42mm厚の空気層ができます。この空気層が断熱の働きをし、家全体を覆うため熱伝導を抑えてくれます。


▶外壁や内壁に100%天然素材のホタテ健康壁 「あわせ」を使用
この壁材は空気中のCO2と結合して硬化するカーボンニュートラルな壁材です。
詳しくはこちら→


▶ボンドではなく膠(にかわ)を使用
接着剤としてできるかぎり膠を使用しています。膠とは動物の皮や骨などから作られる接着剤です。

◎安藤邦廣著「現代の木造住宅論」より

木造住宅の壁として大変優れた土壁は現代の専門化された住宅生産になじまない。軸組みだけでもたっていけない。かわって普及した断熱材をはさんだ合板と石膏ボードのパネル構法は機密性と断熱性に優れているが、温度変化に加えて湿度変化の大きい日本では断熱だけでなく湿度が居住性を大きく左右する。結露しないことも必須の条件。この点土壁の後釜として迎えた筋交いと断熱材ははなはだ相性が悪い。
今日の木造住宅構法で最大の問題は壁であり、伝統の土壁にかわる日本にふさわしい壁の開発が、現代民家誕生の鍵といえる。日本の壁は板壁から土壁へと変遷し、今再び板壁の時代を迎える状況にある。


徳島県木の家づくり協会より「板倉の家」に携わる方達が紹介されています

LinkIcon安藤邦廣氏(建築士)
LinkIcon湊俊司氏(製材所)
LinkIcon沼尻静雄氏(大工・現場監督)




壁の断面模型

「あわせ」左官塗り